最近、独立行政法人日本学生支援機構から訴訟を起こされたという相談があります。いわゆる奨学金の返済を求める訴訟なのですが、日本学生支援機構に大いに問題があります。もっと広い見地に立てば、奨学金制度のあり方自体に問題があることがわかってきます。
奨学金といえば、日本育英会が行っているのではないかと思う方もいるかも知れません。日本育英会は2004年に独立行政法人日本学生支援機構にその業務を引き継いで解散しています。日本学生支援機構になってからは、奨学金はビジネス化してしまいました。利子つきの貸付をどんどん増やし、投資家に優良債権として販売しています。もし不良債権化すると、投資家の人気がなくなりますし、ビジネスとしても成り立ちませんから、回収を強化してきました。延滞が続くと信用情報機関に延滞情報(いわゆるブラック情報)を登録するようになりました。回収したお金は銀行や回収を請け負う債権回収会社の利益になっています。立派な金融ビジネスです。
奨学金はすでに大学生の半数以上が利用しているという現実があります。利用するのが当たり前の時代です。かつては奨学金=優秀な学生への援助というイメージがありましたが、今や奨学金は、学生ローンに過ぎません。卒業と同時に就職していようがいまいが、返済を求められます。最近の制度改善で年収が低い場合は、返済猶予申請ができるようになりましたが、猶予制度はまだまだ使いにくい面があります。
大学卒業と同時に半数以上の学生が返済金を抱えて社会に出て行っている現状があります。以前奨学金を利用していた人は返済が1万から2万円円くらいで、数年で返済できるのだから、大きな問題ではないと思っていますが、現在は違います。借りられる額も昔とは違います。月10万円借りれば4年間で480万円の借金です。これを毎月27,000円ずつ20年間返し続けなければなりません。この返済は晩婚化、少子化の一因になっていることも間違いありません。
一方社会は急速に雇用の不安定化が進んでいます。収入が少なく、かつ不安定な方が多くなってきているのです。そこに奨学金の返済が加わったらどうでしょうか。払えるわけがありません。
奨学金問題は、非常に深刻な社会問題としてとらえる必要があります。
制度の改善は急務ですが、現実に日本学生支援機構から支払督促が届いた、訴訟になったという相談が増えています。裁判所から届く支払督促や訴状を放っておくと、相手の主張を認めたことになり、差し押さえが可能になります。一番考えられるのは給料の差し押さえです。給料は全額差し押さえることはできませんが、4分の1は差し押さえされます。生活に重大な支障を来すことになりますので、裁判所から届く支払督促や訴状は放置せず、きちんと対処しましょう。奨学金の問題であれば、専門家に相談し、今後の対応を考えた方がよいと思います。当事務所でも常時相談を受け付けています。
奨学金問題
2014年10月20日