遺産分割協議を進めていても、相続人の中に連絡がとれなかったり、協議の内容に難色を示す方がおられたりして、相続人全員による合意がすぐに成立しないことがあります。そんなとき、全員の合意を待っていると相続人の内お亡くなりになる方が出てくるかも知れません。その場合協議に参加する方が代替わりすることになり、いっそう合意が難しくなることも考えられます。
自分は相続に関わりたくないという方が相続人の中におり、協議案に賛成している方だけでも先に判子をもらえないかという相談があります。その場合家庭裁判所に相続放棄をすれば、相続人ではなくなりますから、協議に参加することはなくなります。しかし相続放棄は被相続人が亡くなったことを知ったときから3ヶ月以内に行わなければなりません。多くの場合遺産分割協議が難航している内に、3ヶ月が経過しています。
そういうときは、相続分の譲渡を行うという方法があります。相続分を誰か別の相続人に譲渡するという文書に署名押印し印鑑証明書とともに保管しておけば、この相続については関わることはありません(但し負債がある場合は負債を譲渡することは債権者の同意なくできませんから、負債を負いたくないときは相続放棄をする必要があります。)。
例えばある相続で兄弟ABCの3人がおり、遺産をAさんに集中したいとAさんとBさんが考えており、Cさんは反対している場合、Bさんは自分の相続分Aさんに譲渡するという書面に署名し、実印を押印、印鑑証明書を一緒に保管すれば、遺産分割協議に以後加わる必要はありません。以後はAさんとCさんだけの協議でよいことになります。Bさんは反対していないのだから、Aさんは早めに相続分の譲渡を受けることで、万が一Bさんが亡くなったとしても、Bさんの相続人が遺産分割協議に加わることがなくなり、相続人が増えていくリスクをなくすことができます。
相続したいAさんとしてはメリットが大きいですが、一度相続分の譲渡をするとあとで気が変わったという撤回は難しいので、Bさんとしては慎重に考える必要はあります。一方関わりたくない、相続人を増やしたくないということは、Bさんにもメリットと言えます。事案によっては活用してよい制度かと思います。
相続分の譲渡
2017年9月6日